源氏物語より   夢の浮橋

小林 透さん


源氏物語 夢の浮橋より

法(のり)の師と たづぬる道を しるべにて

思わぬ山に ふみまどふかな

(法の師:世のことわり説き聞かせる法師)  

 源氏物語は実際にあったことではない紫式部の長編物語であるが、その終焉の舞台に選んだのが、平安貴族の身近な場所であった宇治であった。全部で五十四帖あるが、最後の十帖の舞台となったのが宇治である。その宇治で三大美女の一人と言われていた浮舟と、光源氏の孫の匂宮(においのみや)の悲恋話である。
 この物語では、匂宮が浮舟を父の薫によって宇治にかくまわれていることを知り、薫の声色で浮舟を安心させ強引に契りをかわし、浮舟も情熱的な匂宮に次第にひかれていきます。このことを知った後も薫は、浮舟を見捨てることなく優しく包み込みます。浮舟はこの三角関係で身の置き所がなくなり、入水すべくさまよい、失踪してしまいます。
 源氏物語の最後に登場するのは、光源氏の子の薫が恋焦がれ、一時かくまった浮舟という姫であるが、姫は失踪し、さまよったあげく倒れているところを尼僧に助けられ、洛北の里に住みます。浮舟の生存を知った薫は、浮舟の弟を洛北に遣わしますが、浮舟は対面を拒み、手紙も受け取りませんでした。何度も返事を催促しますが、その返事はありません。
 薫は、ふと思います。かつて自分がそうしたように、誰かが浮舟をかくまっているのではないか、と。浮舟はやがて出家し、仏道の日々を送ったのである。
 ここで、紫式部によって1,000年前に書かれた壮大な源氏物語は終わっています。
 
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2018.05.23